「いらっしゃいませ。 ここは幸せ屋。 ささやかな幸せ、 大きな幸せ、 色々取り揃えています。」 傷付くのに疲れた男 迷わず貯金をおろした 「これで買えるだけの幸せを売ってくれ」 すがるような声は 狭い店内に響き渡った やっと手にした幸せなのに 男はとても不服そうに 「これっぽっちじゃ何も変えられない」と呟いて 床に叩きつけ店を出ていった 一文無しで街を彷徨う 失えるのは魂ぐらいか このまま朽ち果ててしまえれば どんなに楽だろうか 全財産と引き替えに 手にしたモノは「不老不死」 これっぽっちじゃ何も変えられない 何も変わらないという幸せ それを幸せと呼べない不幸せ 「いらっしゃいませ。 ここは幸せ屋。 ただいま、割引セールを行なっています。」