少女の瞳には何も映らない ロザリオを染める群青の空 ドアを叩いた黒装束の男 「その宝石を私に売ってくれないか?」 少女の瞳には何も映らない 白い肌は翳る濃紺の影 宝石と見紛う汚れ無き身体 「お金は要りません…代わりに愛を下さい」 男の瞳には少女は映らない 暗闇でもがく蜘蛛のように 少女の言葉に絡め捕られて 「愛とは何だ?…金より尊いものなのか?」 男の瞳にロザリオが突き刺さる 曇り無き宝石に拭われし漆黒 床にひれ伏した黒装束の男 「その愛とやらを私に売ってくれないか?」 少女の瞳に映る黒装束 もがく蜘蛛のような男に近付き ナイフのような手をそっと差し伸べた 「お金では買えません…私も持ってません」 男の瞳に少女の手が突き刺さる ロザリオに映る二つの人影 優しさに触れた黒装束の男 「その手のひらが…私の欲しかったもの…」