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からっぽのポケット



どこかに夢を落としたらしい
あの店を出るときは確かにポケットに入ってた
わかったあの時だ
つまづいて転んだ時だ
思ったより痛くて立ち上がるのに精一杯で
気付かなかったんだ

多分今頃風に運ばれ
僕の知らない場所で叶っているのだろうか
からっぽのポケットが
つまづいてできた傷より
痛くて痛くて前を見るのに精一杯で
気付かなかったということが一番痛くて

この傷を癒す薬を
いつか手に入れた時のためのスペースとして
あるいは全てを
失う時がきても
誰かの手を温めることができるように

空けておけばいい

9/17 20:44

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