「好き」の言の葉と引き換えに 彼に近づく痛みを得たの 自慢の鱗はないけれど あの瞳に映ることができたの 嵐の去った月の夜 震える尾ひれを抱きながら 鼓動と同じリズムで鳴く波に 彼の声を思い浮かべてた 彼に近づける嬉しさに 惜しいものなんて何もなくて 自慢の鱗も 唄も 喜んで差し出した 息遣いまで意識しながら 彼の隣を歩いてたわ 行き先が知らないお姫様でも 一緒に連れてってほしかったの 1秒でも一緒にいたかったの 「わたしのこと忘れてもいいから 落とした涙は拾ってね」 搾っても出ない声と引き換えに わたしはそこにいた 可哀想だなんて どうか誰も思わないでね 彼は素敵なひとだった 一生分の恋ができた 足の痛みも 私の想いも かたちになんてならなくていい 泡になってもいいくらい 幸せな女になれたの