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証明写真
貴方の目の前で確かに僕は存在しているというのに
それとは別に僕を証明するものが必要な世の中です
それは履歴書であったり
パスワードであったり
いったいいくつの記号を使えば僕は再現できるんだろう?
例えば僕は僕であって君では決してないけど
それをこの詩の中で表現するにはどうすればいいだろう?
僕がどんな人間かをただ
箇条書きにするだけでいいなら
詩人なんてこの世に存在しない
機械の前で一旦停止
他人の為の存在証明写真
鏡でさえも偽るのに
いったいこいつが何を証明してくれるんだろう
そう言えば貴方の存在だって怪しいもんだよ
僕が勝手に築いている貴方みたいなこの塊
ある場所はぴったり同じで
そのくせかすりもしない場所があるから
何ピースかわからないジグソーパズルやってる気分になるんだ
貴方も僕も君もあの人も結局は一緒なんだろう
だけど一人じゃ淋しいからみんな別ものだと証明するんだ
喜びも不安も歌声も北風も全部一緒なんだろう
だからこの風はとても冷たい
機械の声は一方通行
だけどきちんと僕の証明写真
鏡の向こうで舌を出しても
風が吹けばそれが少し甘いって感じている
それは確かに僕だろう
2009/2/25 19:54
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