712

満月と稲光と



存在どころか
足跡さえも否定して
消えた呼吸

転がっていた愛を
拾えないほど
疲れていた君に
例えばどんな愛なら
届いたのだろう?

幸せを測れないように
悲しみも割り切れなくて
みんな同じだから
自分一人だけのような気がして
この世界の眩しさが
自分には手に入らない気がして
小さな体を止めたのだろうか

幸せをばらまいてみても
それが優しさとは限らない
君に必要なものと
僕の大切なものもまた違うだろう
愛する人の差し伸べた手に
傷ついてしまうくらいなら
自らの手でその呼吸を止めたのだろうか?

君がいなくなって
また一つ僕の世界は
色を失って

満月も稲光も
同じ夜に光る

2010/9/22 23:09

前へ/次へ
リストに戻る