libra 明日を引き寄せるリールが 錆び付いて動かない libra 足元打ち寄せる自由が 冷たくて愛せない libra 三月に降る雪のせいで 閉じ込めていた記憶が目覚めた かじかむ手で水をつかむ 映る姿がまるで母親のように 「libra」 悲しい歌が好きな君は 僕の言葉を愛した 僕の手のなかでぬるくなって 痛みさえも感じない 優しい日射しを浴びた部屋は そんな悲劇を彩る 風も傷さえも許された ねじれの未来目指す libra 雑踏を掻き分けるオールが 空回りで動かない libra いずれかに踏み込む理由が 増えすぎて選べない libra 遠くの空に引っ掻いたような 飛行機雲を残す水色 不安定な机で文字を書く 「ご無沙汰してます」 「元気で暮らしていますか」 「libra」 悲しい愛と気付いても それでもいいと抱き締めた 僕の手のなかでほどけたのは 絡まって赤く見えた糸 君の睫毛から手紙を伝い 僕の足元に落ちた滴 風も裏切りも手を繋ぐ ねじれの未来目指して