あの頃の僕らが この景色を知っていたら 涙はもう少し 澄んでいたかも知れないね 逃げるのに疲れて ほどいたはずの口唇が ひとりでに歩きだす 「もう一度愛したいよ」 強く掴みすぎた 手のひらを少し緩めた 君が振り払うのを 何故か僕は望んでいた 君に借りたままの 小説にはさんでたしおりが 少しだけ時を止めた 難しく考えすぎていた 今なら笑えるよ 君の前でも同じように 乾いた口唇に もう二度と触れないように 少し近付きすぎた 君のそばを少し離れた ざらついた涙を 何故か僕は望んでいた