アヒル
「彼は卵の頃から
他のやつとは少し違ってた。
ちょっとやそっとの衝撃じゃヒビ一つ入らないし、色もどことなく気品があった。」
僕らは真っ白なまま
何も比べずに笑ってた
大きいやつも小さいやつも
大きな声で笑ってた
「卵からかえったヒヨコたちは、みんな小さな翼を持っていた。
そして、みんな目を持ち、口を持っていた。
もしかすると、彼が口を開くまではそのことに気付かなかったのかも知れないけど。」
僕らは真っ白なまま
金色に輝く彼を笑った
キレイだけれどみんなと違う
その美しさを笑ってた
「母親は、彼にこう言った。
『貴方はとても美しいから、立派な白鳥になるでしょう』
その言葉を聞いた彼は涙を流してこう言った。
『立派になんてなりたくない』
『みんなと同じ景色を見たい』」
僕らは真っ白なまま
いられないことは皆分かってた
つまづいたりおっこちたりする過程で
いろんな色に汚れちゃうんだ
そして僕らは真っ白な頃
一緒に笑ってた事さえ忘れてく
ひとりぼっちだと勘違いしたまま
いろんな色に汚れちゃうんだ
「彼は卵の頃から
他のやつとは少し違ってた」
みんな一緒だと勘違いしたまま
汚れた体をごしごし洗うんだ
2006/7/1 23:55
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