左手



「約束なんてしなきゃ良かったね。」
確かにそう聞こえたのに
聞き返しても何も言ってくれない

例えば君が望むならば
左手くらいなら差し出してもいい
咎めるように冷たい頬を
右手でそっと伝えるように撫でた

この出会いは間違いでは無かったね
誰にも許されなかったけど
重ねた過ちは不思議と輝いている

傷を繕えば痛みは増して
自分勝手に狂いそうな夜は
夜空に浮かんで僕を引き裂いて
「あなたはいつもそう。」と冷たく囁いて

約束なんてしなきゃ良かったね
運命の針が歪んでしまった
巻き戻しても未来を描き続ける

君のいない未来を描き続ける

例えば君が望むならば
左手くらいなら差し出してもいい
全てを焼き尽くす冷たい檻に
右手を繋いで一緒に居てあげるから

傷を繕えば痛みは増して
自分勝手に狂いそうな夜は
夢に逃げ込んだ僕を切り裂いて
「あなたは変わらないね。」と冷たく微笑んで

君の居ない未来を
右手に持った筆で描き続ける



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