午前11時の終礼




もう慣れてしまった
手を振るのも自然にできる
ドアノブに手をかけて
ほんの少し訪れる空白

ユニクロの傘とか
なぐり書きのメモとか
いまこの瞬間しか
美しくないのだろうけど
身内ノリの笑いとか
踏み外した話とか
他の人が聞いても
首を傾げるだけなんだろうけど

全部好きだったし

自分の体温で
温かくなった毛布みたいに
自分で築いてた
居場所みたいな逃げ道

ぼろぼろの地図とか
未開封のメモとか
いまこの時を境に
朽ち果ててしまうのだろうけど

意味不明な言葉とか
飲み明かした景色とか
いわゆる常識人は
眉をひそめるだけなんだろうけど

全部好きだったし

もう慣れてしまった
手を振るのも自然にできる
ドアノブに手をかけて
ほんの少し訪れる空白も

全部好きだったし



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